「やさしい日本語」のガイドライン:文を短くする

この記事では、「やさしい日本語」で文章を書くためのガイドライン(手引き)の 1 つ「文を短くする」を解説します。

ところどころにある「語彙と文法を確認する」をクリックすると、直近の書き直しで使った語彙と文法を確認することができます。

ガイドラインの概要については、次の記事を参照してください。

原則

「やさしい日本語」では、文を長くしないように心がけます。短い文は長い文よりも読みやすいため、可読性と判読性が高くなります。結果として、書き手の意図を読み手に正確に伝えることができます。

目安としては、1 文あたり 35 文字以内です。文が長くなる場合は、複数の文に分けたり、必要性が低い言葉を削除したりします。

1 文を短くするためには、次のテクニックを使います。

  • 複数の文に分ける
  • 不要な語句を削る
  • 箇条書きを使う

具体例(複数の文に分ける・その 1)

書き直し前 昨日きのう、わたしは 友達ともだちと 東京とうきょうへ って、いろいろな ものを いました。

書き直し後 昨日きのう、わたしは、友達ともだちと 東京とうきょうへ きました。わたしたちは、いろいろな ものを いました。

この例文は、1 つの文に次の情報(伝えたいこと)を含んでいます。

  • 私は友達と東京へ行った
  • 私たちはいろいろ買った

この場合、2 つの短い文に分けることができます。

語彙

次の語彙は、日本語能力試験(JLPT)の N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 昨日
  • 私たち
  • 友達
  • 行く
  • いろいろ(な)
  • 買う

文法

次の文法は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 〜は
  • 〜と
  • 〜へ
  • 〜を

具体例(複数の文に分ける・その 2)

書き直し前 地震じしんのとき、エレベーターではなく、階段かいだんを 使つかって ください。

書き直し後 地震じしんのとき、エレベーターを 使つかわないで ください。階段かいだんを 使つかって ください。

この例文は、1 つの文に次の情報(伝えたいこと)を含んでいます。

  • エレベーターを使わないでほしい
  • 階段を使ってほしい

この場合、2 つの短い文に分けることができます。

語彙

次の語彙は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • エレベーター
  • 階段
  • 使う

次の語彙は N4 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 地震

文法

次の文法は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 〜を
  • 〜てください
  • 〜ないでください

次の文法は N4 レベルです。

  • 〜のとき(名詞に続けて使います)

具体例(複数の文に分ける・その 3)

書き直し前 東京とうきょうスカイツリーは、たかさ 634 メートルの とても おおきい 建物たてものです。

書き直し後 東京とうきょうスカイツリーの たかさは 634 メートルです。東京とうきょうスカイツリーは とても おおきい 建物たてものです。

この例文は、1 つの文に次の情報(伝えたいこと)を含んでいます。

  • 東京スカイツリーの高さは 634 メートルある
  • 東京スカイツリーはとても大きい

この場合、2 つの文に分けることができます。

語彙

次の語彙は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • メートル
  • とても
  • 大きい
  • 建物

次の語彙は N4 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 高さ

文法

次の文法は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 〜の
  • 〜は〜です

具体例(複数の文に分ける・その 4)

書き直し前 災害さいがい台風たいふうや 地震じしんや 火事かじなど)のとき、ちかくの 避難所ひなんじょげる ところ)へ って ください。

書き直し後 災害さいがいのとき、ちかくの 避難所ひなんじょへ って ください。災害さいがいは、台風たいふうや 地震じしんや 火事かじなどのことです。避難所ひなんじょは、げる ところです。

この例文は、「災害」と「避難所」に注釈を入れたため、1 文が長くなっています。「災害」と「避難所」の注釈をそれぞれ独立した文に書き直します。

語彙

次の語彙は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 近く
  • 行く
  • など
  • ところ
  • こと

次の語彙は N4 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 台風
  • 地震
  • 火事
  • 逃げる

次の語彙は N2 レベルです。注釈を入れるか、他の語彙で言い換えます。

  • 災害

次の語彙は N1 レベルです。注釈を入れるか、他の語彙で言い換えます。

  • 避難
  • 避難所

文法

次の文法は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 〜の
  • 〜へ
  • 〜や
  • 〜は〜です
  • 〜てください

次の文法は N4 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 〜のとき(名詞に続けて使います)

具体例(不要な語句を削る)

書き直し前 さっき かみなりが ごろごろ った。

書き直し後 さっき かみなりが った。

この例文には擬音語「ごろごろ」が含まれています。しかし、この場合はなくても意味がとおるため、削除します。

語彙

次の語彙は N4 レベルです。問題なく使うことができます。

  • さっき
  • 鳴る

次の語彙は N3 レベルです。できれば注釈を入れるか、他の語彙で言い換えます。

文法

次の文法は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 〜が

具体例(箇条書きを使う)

書き直し前 明日あした筆記用具ひっきようぐくための 道具どうぐ)と 申込用紙もうしこみようしもうむための かみ)と 弁当べんとうを ってきて ください。

書き直し後 明日あした、つぎの ものを ってきて ください。

  • 筆記用具ひっきようぐく 道具どうぐ
  • 申込用紙もうしこみようしもうむ かみ
  • 弁当べんとう

この例文は、1 つの文でつぎの 3 つの項目を列挙しています。

  • 筆記用具(書く道具)
  • 申込用紙(申し込む紙)
  • 弁当

この場合、箇条書きを使って書き直すことができます。

なお、「申込用紙」の注釈は「申し込む『ための』紙」の方が自然かもしれません。しかし、「〜ため」は N3 レベルの文法です。

語彙

次の語彙は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 明日
  • つぎ
  • 持ってくる
  • 書く
  • 弁当

次の語彙は N4 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 道具
  • 申し込む

文法

次の文法は N5 レベルです。問題なく使うことができます。

  • 〜の
  • 〜を
  • 〜てください(指示を表す文で使う表現)
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