「やさしい日本語」のガイドライン

この記事では、「やさしい日本語」で文章を書くためのガイドラインを紹介します。このガイドラインに従えば、読みやすい「やさしい日本語」の文章を書くことができます。

「『やさしい日本語』のガイドライン」は、次の2つに分けられます。

  • 「やさしい日本語」で文章を書くために心がけること
  • わかりやすい文章を書くために心がけること

この記事では、これらの概要を具体例と共に解説します。詳しく知りたい方は、個別の解説記事も参考にしてください。

「やさしい日本語」について詳しく知りたい方は、「『やさしい日本語』とは何ですか?なぜ必要なのですか?」を参照してください。「やさしい日本語」の定義、読み手、活用場面などが理解できます。

「やさしい日本語」で文章を書くために心がけること

難しい言葉や文法を使わない

「やさしい日本語」では、簡単な語彙と文法を使います。想定する読み手は日本語を母語としない人たちだからです。

語彙と文法の目安は、日本語能力試験(JLPT)の N4 および N5 レベルですこれらのレベルの目安は次のとおりです。

  • N4 レベル:基本的な日本語を理解することができる
  • N5 レベル:基本的な日本語をある程度理解することができる

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 この 階段かいだんは 使用しよう禁止きんしです。

書き直し後 この 階段かいだんは 使つかうことが できません。

書き直し後 この 階段かいだんを 使つかわないで ください。

詳細については、次の記事を参照してください。

敬語(尊敬語と謙譲語)を使わない

「やさしい日本語」では、尊敬語と謙譲語を使わないように心がけます。尊敬語や謙譲語は婉曲的な表現であるため、「やさしい日本語」には向いていません。

同じ敬語でも丁寧語は使います。その理由は、文体として敬体(ですます調)を使うためです。ただし、「お店」や「お食事」など、接頭語(「接頭辞」とも言います)は使いません。例外は「お金」です。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 こちらに おけになって ください。

書き直し後 ここに すわって ください。

詳細については、次の記事を参照してください。

オノマトペ(擬態語と擬音語)を使わない

「やさしい日本語」では、オノマトペを使わないように心がけます。オノマトペとは、擬態語や擬音語のことです。

例えば、「ふらふら歩く」の「ふらふら」は擬態語です。「雨がザーザー降る」の「ザーザー」は擬音語です。

日本語を母語としない人にとって、オノマトペは難しい表現です。オノマトペは使わない、もしくは分かりやすい表現に言い換えます。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 今日きょうは あめが ザーザー っています。

書き直し後 今日きょうは あめが たくさん っています。

詳細については、次の記事を参照してください。

あいまいな表現を使わない

「やさしい日本語」では、あいまいな表現を使わないように心がけます。あいまいな表現は読み手によって解釈が異なるため、「やさいしい日本語」には向いていません。

例えば、「明日は『少し』早く来てください」の場合、「少し」は人によって解釈が異なります。5 分早く来ればよいのか、それとも 30 分早く来なければいけないのか、はっきりしません。

書き手の意図を正確に伝えるためには、明確な表現を使います。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 明日あしたは すこし はやく て ください。

書き直し後 明日あしたは 9 50 ぷんに て ください。

詳細については、次の記事を参照してください。

カタカナ言葉に注意する

「やさしい日本語」では、カタカナ言葉に注意します。外来語の場合、もとの発音と異なることがあります。また、和製英語の場合、意味が通じないことがあります。

ただし、次の条件を同時に満たすカタカナ言葉は、そのまま使います。

  • 日常生活でよく使う
  • カタカナ言葉以外での表現が難しい

例えば、「バス」、「テレビ」、「ガラス」、「インターネット」などがこの条件に該当します。

詳細については、次の記事を参照してください。

文末の表現を統一する

「やさしい日本語」では、文末の表現を統一するように心がけます。具体的には、日本語を学ぶひとが初期に習う表現を使います。これにより、読み手は書き手の意図を理解しやすくなります。

文末の表現を統一する例は、次のとおりです。

  • 可能を表す文は「〜することができます」で統一する
  • 不可能を表す文は「〜することができません」で統一する
  • 指示を表す文は「〜してください」で統一する
  • 可能性を表す文は「〜かもしれません」で統一する

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 受付うけつけで もうめます。

書き直し後 受付うけつけで もうむことが できます。

詳細については、次の記事を参照してください。

わかち書きをする

「やさしい日本語」では、わかち書きをします。わかち書きとは、文節と文節の間に余白を入れることです。

わかち書きをすることで文が読みやすくなり、可読性(読みやすさ)と判読性(分かりやすさ)を高めることができます。結果として、書き手の意図を読み手に正しく伝えることができます。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 受付うけつけ名前なまえってください。

書き直し後 受付うけつけで  名前なまえを って ください。

詳細については、つぎの記事を参照してください。

漢字にルビ(ふりがな)をふる

「やさしい日本語」では、すべての漢字にひらがなでルビ(ふりがな)をふります。ルビをふることで、読み手は漢字の読み方を正しく理解することができます。また、必要に応じて、漢字以外の語彙(数字や英単語など)にもルビをふります。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 図書館は、今月の 1 日から 20 日まで 休みです。

書き直し後 図書館としょかんは、今月こんげつの 1 日ついたちから 20 日はつかまで やすみです。

詳細については、次の記事を参照してください。

わかりやすい文章を書くために心がけること

文を短くする

「やさしい日本語」では、文を長くしないように心がけます。短い文は、長い文よりも可読性(読みやすさ)と判読性(分かりやすさ)に優れています。結果として、書き手の意図を読み手に正しく伝えることができます。

目安としては、1 文あたり 35 文字以内です。文が長くなる場合は、複数の文にわけたり、必要性が低い言葉を削除したりします。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 新型しんがたコロナ ウイルスが おおきい 問題もんだいに なっているので、かけるとき マスクをつけて、ひとが たくさん いるところへ かないで ください。

書き直し後 新型しんがたコロナ ウイルスが おおきい 問題もんだいに なっています。かけるとき マスクを けて ください。ひとが たくさん いるところへ かないで ください。

詳細については、次の記事を参照してください。

1 つの文に 1 つのメッセージのみを含める

「やさしい日本語」では、一文一意(「一文一義」とも言います)を心がけます。一文一意とは、文ごとに伝えたいことを 1 つに絞るということです。一文一意を心がけることで、簡潔で分かりやすい文を書くことができます。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 今日きょうの 午後ごご、おおきい 台風たいふうが くるので、あめや かぜに を つけて、かけるとき かさを わすれないで ください。

書き直し後 今日きょうの 午後ごご、おおきい 台風たいふうが きます。あめや かぜに を つけて ください。また、かけるとき かさを わすれないで ください。

詳細については、次の記事を参照してください。

伝えたいことを先に書く

「やさしい日本語」では、トピック センテンスを段落の 1 行目に持ってきます。トピック センテンスとは、その段落で一番伝えたい文のことです。

段落の 1 行目にトピック センテンスがあると、読み手はその段落の概要(伝えたいこと)をすぐに理解することができます。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 明日あしたあめが たくさん るかも しれません。つよい かぜが くかも しれません。明日あした おおきい 台風たいふうが るからです。だから、を つけて ください。

書き直し後 明日あしたおおきい 台風たいふうが ます。あめが たくさん るかも しれません。つよい かぜが くかも しれません。だから、を つけて ください。

詳細については、次の記事を参照してください。

動詞を名詞化しない

「やさしい日本語」では、動詞の名詞化を避けるように心がけます。その代わりに動詞文を使います。動詞文を使うことで、より簡潔な文章を書くことができます。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 午後ごご 1 から 午後ごご 2 まで 休憩きゅうけいして ください。

書き直し後 午後ごご 1 から 午後ごご 2 まで やすんで ください。

詳細については、次の記事を参照してください。

二重否定を使わない

「やさしい日本語」では、二重否定を使わないように心がけます。例えば、「この道は通れないことはない」などが二重否定です。二重否定の文は分かりにくいため、読み手が混乱する原因になります。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 この みちは とおれないことは ありません。

書き直し後 この みちは とおることが できます。

詳細については、次の記事を参照してください。

箇条書きを使う

「やさしい日本語」では、箇条書きを上手に活用することを心がけます。箇条書きとは、要点を簡潔に整理する表現方法です。箇条書きを使うことで、読み手に伝えやすい文章を書くことができます。

「やさしい日本語」への書き直しの例は、次のとおりです。

書き直しの例

書き直し前 ねつが ある ひとや からだの 具合ぐあいが わるい ひとや になる 症状しょうじょうが ある ひとは、すぐに 病院びょういんに 電話でんわして ください。

書き直し後 つぎの ひとは、すぐに 病院びょういんに 電話でんわして ください。

  • ねつが ある ひと
  • からだの 具合ぐあいが わるい ひと
  • になる 症状しょうじょうが ある ひと

詳細については、次の記事を参照してください。

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